第69章 損をしたのか?

高山藤は実に口がうまい。佐藤愛の素性を明かすことなく、それでいて彼女の格をさりげなく引き上げた。自分の息子の友人が北村辰から絵を借りられるとなれば、父親である自分の面子も丸潰れにはならない、というわけだ。

北村辰が所有するそれらのコレクションについては、誰もが強い関心を抱いていた。

彼らは皆、画展でその名画を一目見ようと待ち構えている。

数分後、画展の外に一台のビジネスバンが停まり、スタッフが慎重に車から絵を運び出した。

すぐに、絵は室内へと運び込まれる。

すべての人々の視線がその数枚の絵に釘付けになったその時、一台のひときわ目を引くスポーツカーが猛スピードで急停車した。続いて、ま...

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