第75章 利用されたようだ

さっきまでの横柄な態度はどこへやら、今の山口は身を低く屈め、部屋の中をぐるりと見渡した。北村辰の姿を捉えるや否や、たるんだ頬の肉を揺らしながら、小走りで彼の前へと駆け寄っていく。

その様は、まるで舞台上の道化師のようで、ひどく滑稽だった。

「北村社長、山口と申します。申し訳ありません、本日の件は全くの誤解でして」

「あの絵が社長のものであるとは、つゆ知らず……北村社長、私が間違っておりました。どうかご勘弁を……」

山口がペコペコと頭を下げて北村辰に謝罪するが、北村辰は一瞥もくれない。ただ足を上げると、山口の肥満した体目掛けて、ドンッと一発蹴りを入れた。山口の体は破れた麻袋のように、遥...

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