第76章 虎の威を借る狐

北村辰の言葉に、佐藤愛はぎょっとして、すぐに背筋を伸ばし、緊張した面持ちになった。

北村辰は彼女の表情を眺め、その眼差しは複雑で読めなかった。佐藤愛は彼の視線に心中穏やかでなく、彼が次に何を言うのか全く見当がつかなかった。

「今日、俺は誰かに利用されたんじゃないか?」

佐藤愛が答えないのを見て、北村辰はさらに問い詰めた。

佐藤愛の心は、より一層ためらった。

彼女は気持ちを落ち着かせると、笑顔を作って北村辰に顔を向けた。「辰兄さん、少し考えすぎじゃないですか?」

「明らかにあの山口があなたの絵を奪ったのを、あなたが出て行って取り返しただけじゃないですか。どうして利用されたってことに...

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