第81章 彼女の自慢話を聞かないで

北村辰の吐息が佐藤愛の顔にかかった瞬間、平静を取り戻していたはずの佐藤愛は、再び心を乱された。

心臓が早鐘を打ち、顔が赤らみ、全身がこわばる。

逃げ出そうと顔を背けたが、北村辰にぐいと引き戻されてしまった。

「まだ俺の質問に答えてないだろ? 教えろよ、今朝早くどこへ出かけてたんだ?」

北村辰に引かれるのを予期していなかった佐藤愛は、不意によろめき、彼の胸の中へと倒れ込んだ。肌と肌が触れ合ったその瞬間、北村辰の脳裏に、あの夜のプールでの裸の付き合いが鮮明に蘇る。

彼の呼吸が、思わず荒くなった。

佐藤愛の腕を掴んでいた手にも、自然と力がこもる。その瞳には、ある種の光が宿っていた。

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