第89章 伝説のぶりっ子

己の命を守るため、佐藤愛はすっと立ち上がってその場を離れた。今や、足の痛みも感じなくなり、その歩く速さたるや、兎をも凌ぐほどだった。

北村辰の怒りに触れるくらいなら、自分の足が少し痛む方がよほどましだ。

佐藤愛は席を立ち、化粧室へと向かった。ちょうどその時、午前中に北村辰に罵倒された葉田静香が、なんとも都合よく同じレストランに現れた。

彼女はまず、レストランに座っている北村辰と北村蕭の姿を認め、続いて、慌ただしく化粧室へ向かう佐藤愛の姿を目にした。

佐藤愛を見た瞬間、葉田静香は拳を固く握りしめた。

なんて女だ。胸もなく、尻もないくせに、よくも北村辰の気を引けたものだ。

彼女のため...

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