第5章
土曜の早朝。爽やかな日差しの中、私はサングラスをかけ、白杖を手に新宿駅の前に立っていた。
「真菜!」
遠くから鈴木明子の声が響く。本格的な登山装備に身を包んだ彼女は、その鮮やかな色合いも相まって人混みの中でも一際目立っていた。
その後ろには、私が長いこと目にしていなかった、気負いのない笑顔を浮かべた平床勝人の姿があった。
「本当に来てくれたんだね」
勝人は私の手を取る。その声には驚きと、わずかな気まずさが滲んでいる。
「無理だと思ってたから……」
「新しい体験をしてみたいと思ったの」
私は微笑んで答えた。
鈴木明子が歩み寄り、大げさに私を抱きしめる。
「真菜、...
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