第9章

 九条玲子から電話がかかってきた。

「もしもし? 玲子さん?」

 電話の向こうは数秒間、沈黙していた。

「澪ちゃん……」

 彼女の声には迷いがあった。

「一つ、聞いてもいいかな」

「何でしょう?」

「あなたには、お姉さんがいた?」

 スマホを握る指が強張る。

「いました」

 私は静かに答えた。

「雨宮遥といいます」

「彼女は……」

 玲子さんの声がさらに小さくなる。

「事件に巻き込まれたの?」

「はい」

 再び沈黙が落ちる。

 彼女の呼吸音が聞こえる。静かだが、抑えきれない感情が混じっている。

「澪ちゃん」

 彼女はようやく口を開いた。

「玉井さんが…...

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