第27章 子ウサギとオオカミ

その言葉に、北条寒生はハッとした。

笑っていたのか?自分でも気づかなかった。

彼女の言葉が、心を軽く揺さぶった。

そうだ。自分にも笑顔があったのだ。

あんな心からの笑顔を見せるのは、いつ以来だろう。十年前か、もっと前か。もう覚えていない。

彼のような人間が、そんなに気を緩めてはいけない。冷酷でなければ、自分のものを取り戻せない。

緩んでいた表情が冷たさを取り戻し、眉間にしわが寄る。

葉山ゆうは、彼が再び心を閉ざしていくのを感じた。さっきの笑顔は、やはり一瞬の出来事だった。

柏本おじさんの言葉を思い出す。彼は本当は寂しい人なのだと。長い間自分を閉ざしていれば、寂しくなるはず。で...

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