第35章 見えないのか、それとも彼を気にしない?

苦悩の末に、ようやく会社に到着した葉山ゆうは、顔が冷たさで青ざめそうだった。

すぐには車から降りず、まず北条寒生の様子を窺い、何か言ってくれるのを待った。しかし彼は沈黙を続け、表情は強張ったまま、唇を一文字に結んでいた。

「じゃあ、先に上がります。バイバイ」葉山ゆうは余計なことを言う勇気もなく、ドアを開けて降り、寒さに小さく震えた。

さっきの車内の温度は氷点下だったんじゃないだろうか。すごく寒い。

北条寒生は顔を上げ、小走りに去っていく葉山ゆうの後ろ姿を見つめた。まるで活き活きとした魚のようだ。

眉間のしわはさらに深くなった。

まだそんなに嬉しそうにしていられるなんて、彼が怒って...

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