第37章 上月星

バラ園はロマンチックな雰囲気に包まれていた。

ウェイターの安田が腰を折り曲げて一礼した。「こんばんは」

「ゆうちゃん?」安田の若くて清秀な顔に意外の色が過ぎった。「久しぶり、どうしてここに?」

「数日ぶりくらいでしょ」葉山ゆうは冗談めかして言った。

「語り合いに来たんじゃない!」北条寒生の冷たい声が響いた。

「あ、すみません、どうぞお入りください」安田は驚きと恐れを隠せず北条寒生を見た。ゆうちゃんがなぜこんな男と一緒に?

二人が入るなり、葉山ゆうの元同僚たちが驚きと羨望の眼差しで彼女を見つめていた。

「あれ、ゆうちゃんじゃない?前にいたあのお客さんと」

「ゆうちゃん、金持ちに...

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