第42章 謎に満ちたディレクター

「気づかなかったの?私、あなたに取り入ってるのよ」葉山ゆうは正直に答えた。

北条寒生は表情を冷ややかにして言った。「無償の親切に隠し立てなし、善意か悪意か」

「そんな嫌な言い方しないでよ。せっかく心を込めて作ったんだから」葉山ゆうは小声で呟いた。「休戦協定を結ばない?昨日は私が悪かったわ。だからお願い……安田さんの仕事、返してあげてくれない?」

やはりあの男のためか。予想していたとはいえ、北条寒生は思わず失望と皮肉を感じずにはいられなかった。

失望?失望するということは期待があったということだ。

この女が単純に彼と仲直りしたいだけ、彼を怒らせたくないだけ、と期待していたのだろうか?...

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