第45章 そんな言葉はない

「思いがけない質問だね」

上月星は二秒間固まった後、目を輝かせて笑った。「多重人格?」

「そうよ、会社ではすごく厳しいのに、プライベートではこんなに……」

「情熱的だと?」

葉山ゆうは頷いた。まさに完璧な遊び人だ。

「言っただろう、人間には二つの顔がある。本当の顔と、偽りの仮面と」

「じゃあ、どっちが本当の顔なの?」葉山ゆうには区別がつかなかった。おそらく酒が本当に回ってきたのだろう、頭がますます重くなり、言葉も舌がもつれていた。

酔った目で目の前の顔を見つめる。眼鏡を外した彼の五官は驚くほど美しく、柔らかさの中に少しも女性的ではない魅力があり、その眼差しは人を惹きつけて、彼女...

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