第54章 機密漏洩

夜の9時、北条寒生が家に帰ってきた。

「お坊ちゃま、お帰りなさいませ。葉山さんが今、キッチンでスープを作ってらっしゃいますよ」

北条寒生はスーツを柏本さんに渡すと、一日の疲れが一気に吹き飛んだ。「そうか?」

誰かが自分の帰りを待っているという感覚……心が動かされる、言葉では表せない感覚だった。心の中に一つの期待が生まれていた。

「家」という概念が、少し具体的になったような気がした。

「へへ、どうしていつも食事時に帰ってくるの?」スープを運んでくる葉山ゆうの顔には笑みが溢れていた。

北条寒生は袖をまくり上げ、小麦色の腕を少し露わにした。スープを飲みながら、彼女が何度か口角を上げるの...

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