第4章

 東京の空が白み始めていた。

 私は車のシートに身を沈め、バックミラーの中で遠ざかっていく古びた雑居ビルを眺めていた。脳裏では、先ほどの光景が繰り返し浮かんでいる——佐佐木小春の瞳に宿る深い憎悪、高嶺翔太から浴びせられた冷酷な侮蔑、そして目の眩むような膨大な企業分析レポートの数々。

「白石さん、まっすぐご自宅へ戻られますか?」

 運転手の声が、私の思考を遮った。

「いいえ」私は腕時計に目をやった。午前五時半。「白石商事の本社へ向かって」

 運転手は一瞬、呆気にとられたような声を出す。「しかし、まだ始業時間には……」

「ええ、わかっているわ」私はシートに深く体を預け、目を閉じた。「...

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