第48章

篠原千穂が離婚の話をまた持ち出したと聞いて、木戸達也は眉間にしわを寄せ、そのまま電話を切った。

ちょうどその時、秘書が入ってきて、「木戸社長、水野さんがお見えになりました」と告げた。

最近、水野優子はしょっちゅう木戸グループに顔を出し、まるで木戸グループ社長夫人のように、もう世間に公表するのを待ちきれないといった様子だった。

木戸達也が秘書を下がらせると、水野優子は艶やかな腰つきで彼の側に歩み寄り、自然な流れで彼の膝の上に座った。

水野優子の鬱病を気遣って、木戸達也は以前より彼女に対して思いやりを示し、話し方さえも極めて優しくなっていた。

だが、先ほど篠原千穂との電話を終えた後、彼...

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