第50章

篠原千穂のそんな嬉しそうな顔を見て、深川美咲は自分の懸念を口にするのを止めた。

二人は自習を終え、深川美咲は寮に戻る準備をした。

彼女は篠原千穂に尋ねた「帰り、どうするの?もう9時過ぎよ、自分で車を運転してきたの?」

「ううん、朝は渋滞がひどくて、地下鉄で来たの」

篠原千穂は少し考えてから言った「でも今なら、たぶん最終電車に間に合うと思う」

深川美咲は念を押した「じゃあ、絶対に気をつけてね。家に着いたら連絡してよ」

「わかったわ、おやすみ!」篠原千穂は手を振り、資料の束を抱えたまま校門を出た。

遠くに、見覚えのあるシルエットが道路の向こう側に立っているのが見えた。

木戸達也の...

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