第20章

『静思の湯』は、L市に拠点を置く筱宮グループ傘下の高級温泉クラブだ。

普段、ここを訪れるのはL市でも指折りの富裕層ばかりである。天然温泉のみならず、マッサージやスパトリートメントも完備されており、『静思の湯』はL市で最も贅沢な癒やしの空間と言っても過言ではなかった。

皐月夏帆は数年前の出産が原因で、以前から体調が万全とは言えなかった。加えて、外科医としての長時間の立ち仕事が祟り、慢性的な腰痛に悩まされていた。

特にここ二、三日は、暁月海斗の病院での執刀が続いたこともあり、古傷の腰痛が悪化していた。

一日中デスクワークをこなした今日の夕方には、腰が痛みで強張り、背筋を伸ばすことさえ辛い...

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