第35章

篠宮家の正門へと続く石段に腰を下ろし、夜は夜空に浮かぶ月を見上げていた。

その傍らには、四十代ほどの家政婦が付き従っている。普段、夢の世話を一手に引き受けている李だ。

李は、不機嫌そうな夜の様子を見て、小声で気遣わしげに声をかけた。

「夢ちゃん、そんな冷たいところに座っていないで。冷えるから風邪を引いてしまうわ」

夜は小さく首を振った。

「李おばさん、あと少しだけ」

「じゃあ、夢ちゃん、何か食べたいものはある? おばさんが作ってあげるわ」

李が尋ねると、夜の瞳がパッと輝いた。

「私……おばさんが作った牛肉トーストが食べたい」

それを聞いた李は顔をほころばせた。夢が自分から「...

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