第56章

篠宮湊に「欲求不満」だと罵られ、皐月夏帆は言い返そうと口を開きかけた。

だが、自分の寝相の悪さには心当たりがある。確か、長い夢を見ていて、夢の中で枕を抱きしめ、心地よく眠っていたはずだ。

まさかその「抱き枕」が、篠宮湊だったとは。

夏帆は気まずさを感じながらも、必死に抵抗した。

「私が欲求不満ですって? 私たち、赤の他人よね。どうしてそんなに親切なのよ? わざわざホテルまで運んでくれたりして」

「まさか、何かやましい下心でもあるんじゃないの?」

「君こそ、頭の中がピンク色なんじゃないか」

夏帆の言葉に、篠宮湊は呆れたように返した。

まったく、世も末だ。善意で人助けをしても、こ...

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