第70章

綾瀬結愛は震える指先を階段の踊り場へと向けた。

霧島真と篠宮湊は、彼女が指し示す方向へと視線を走らせる。だが、そこには何もなく、ただ虚空が広がっているだけだった。もちろん、夢ちゃんの姿などどこにもない。

篠宮家の面々から少し離れた場所に立っていた皐月家の三人も、綾瀬結愛の言葉に青ざめていた。

とりわけ、悪事に手を染めた張本人である翠川螢の緊張は極限に達していた。

何しろ、こっそりとICUに忍び込み、夢ちゃんに冷水を流し込んだのは彼女自身なのだ。

もし夢ちゃんが死んでしまったら、その怨霊が復讐しに来るのではないか。

翠川螢は考えれば考えるほど恐怖に襲われ、すがるように皐月秋雨の手を...

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