第73章

ICUの扉越しに、綾瀬結愛は皐月秋雨のその無様な姿を目にし、思わず冷ややかな鼻声を漏らした。

彼女の人を見る目は、いつだって狂いがない。この皐月秋雨という女は、所詮、水色未羽の足元にも及ばない存在だ。相手が去ってから、その背中に向かって喚き散らすのが関の山だ。

もし彼女が愛しい孫娘の夢ちゃんを産んでいなければ、綾瀬結愛にとって、その顔を見ることでさえ吐き気を催すほどの苦行だっただろう。

警察が皐月夏帆を連行した後、篠宮湊の心は乱れていた。

加えて、皐月家の人間の喚き声が、彼の苛立ちを増幅させる。

篠宮湊は綾瀬結愛のそばに歩み寄り、声をかけた。

「母さん、夢ちゃんはまだ昏睡状態から...

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