第91章

霧島真から「篠宮湊は多忙につき面会できない」と告げられた瞬間、皐月秋雨は絶望の淵に立たされたような感覚に襲われた。篠宮夫人の座が、手の届かない場所へと遠のいていく。

せっかくのチャンスを、このままみすみす逃すわけにはいかない。

数年前、彼女は策を弄して篠宮湊を陥れ、苦労の末に夢という名の娘を産んだのだ。本来の筋書きでは、夢が手術台の上で息を引き取り、悲劇の母となった自分が篠宮湊の同情と憐憫を誘って、篠宮家の敷居を跨ぐはずだった。

だが今、そのすべての布石が無駄になろうとしている。

諦めきれるはずがなかった。

思い詰めた秋雨は、夢の病室がある方向に向かって、なりふり構わず叫び始めた。...

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