第138章 全身で退くことを望む、夢を見ている

「お嬢さん、早くネックレスをお出しになった方がよろしいのでは。あれは山本家の家宝で、ただの品物ではございませんのよ」

平川希は依然として落ち着いた様子でその場に立ち、いましがた口を開いた人物をまっすぐに見つめた。「何も取っていないと言いました。何を出せと言うのですか?」

平川希が認めないのを見て、山本綾乃は眉間の皺をさらに深くし、瞳の奥に悲しみを湛えた。

その一筋の悲しみが他の人々の目に映ると、皆はますます山本綾乃のために不平を鳴らした。

「山本さんの部屋に入ったのはあなただけ。今ネックレスがなくなったとなれば、あなた以外に誰が取ったというの?」

「そうよ、山本さんが親切心で部屋で...

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