第63章 科長に昇進、あなたは腕がいい

高原賢治と結婚して三年。彼は仕事が忙しく、彼女が一日三食、手料理を作って彼の帰りを待っていても、こうして一緒に食卓を囲む機会は滅多にない。

時には保温弁当箱に料理を詰めて会社まで届けることもあったが、大抵は顔を合わせることすら叶わなかった。

このように正式に二人で食卓を囲むのは、なんと貴重なことか。かえって少し居心地の悪さを感じてしまうほどだ。

平川希が箸をつけずにいるのを見て、高原賢治はちらりと目を上げ、彼女を一瞥した。

「食べろ」

平川希はようやく我に返り、小さく「うん」と頷いて箸を動かし始めた。この店の料理のせいか、それとも他の理由があるのか、運ばれてくる料理はどれもこれも驚...

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