第11章 けんかして病院に行く

一時間後、古村陽平は電話会議を終えると、書斎のソファーで眠りこけている女性の姿を目にして、初めて苦笑いを浮かべた。

わざわざここまで来て眠るつもりだったのか?

長い脚で歩み寄ると、床に落ちている薄い紙が二枚目に入った。離婚協議書だった。

彼の表情から笑みが消え、険しい顔つきに変わった。離婚の話をしに来たというわけか。そんなに急いでいるのか?

確かに離婚を切り出したのは自分だが、離婚協議書に彼女のサインがすでにあるのを見ると、なぜか胸の中が落ち着かなかった。

彼女にも苦しんでもらおうと、床に落ちていたクッションを拾い上げ、江崎鏡めがけて投げつけた。

江崎鏡は軽く休んでいただけで、深...

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