第17章 真夜中に部屋に戻る

江崎鏡は古村恵子を見つめながら、かつてなぜあれほど彼女を恐れていたのか分からなくなった。今見ると、ただの見識の狭い奥様に過ぎないと思えた。

「何か言いなさいよ。何よ、その態度。最初から陽平との結婚に反対だったのよ。やっぱり私の目に狂いはなかったわ。身分の低い娘なんて、表に出せたものじゃないわ……」

「うっ……」

古村恵子の言葉が終わらないうちに、江崎鏡は彼女に吐いてしまった。恵子の顔は青ざめ、それから緑色に変わり、実に見物だった。

「きゃっ!江崎鏡、よくも!」古村恵子は数歩後ずさり、吐き気を催すほど気分が悪くなった。

江崎鏡は手で口を拭い、わざとらしく申し訳なさそうな表情を浮かべた...

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