第24章 艶めかしい雰囲気

古村陽平は三秒ほど躊躇った後、すぐに腰を下ろした。

「いただきます」と言って躊躇なくルームサービスのスプーンを手に取り、食べ始めた。江崎鏡はご飯を喉に詰まらせそうになった。目の前の古村陽平は、あの高慢で威圧的な社長とは思えない姿だった。

「夕食まだだったの?」江崎鏡は言葉を詰まらせながら尋ねた。彼が既に江崎清と食事を済ませているものと思っていたのに。

しかし古村陽平は答えなかった。怒っているのか、わざとなのか。彼女も気にせず、もう追い出すこともできず、二人は黙々と食事を続けた。

江崎鏡は不思議な気持ちになった。この頃は会えば喧嘩か険悪な雰囲気ばかりだったのに、今は旅館の一室で向かい合...

ログインして続きを読む