第3章 あなたを信じるか私を信じるか

江崎清はすぐに気づき、苦笑いしながら説明した。

「お姉さんが前に、まだ子供は欲しくないって言ってたんです」

これこそが江崎清が本当に恐れていたこと。江崎鏡が古村陽平の子を宿しているのではないかという不安だった。

彼女は俯き、誰にも気づかれることなく、その目に一瞬よぎった冷たい光を隠した。

トイレで、江崎鏡は便器の前にしゃがみ込んで吐き気を抑えきれなかった。しかし何も出てこず、ただ涙が無理やり絞り出されるだけだった。

後から来た古村陽平も突然吐き気を感じ、便器の前でしゃがみ込む女性を見ながら、洗面台に駆け寄った。何度か空嘔吐を繰り返したが、何も出てこなかった。

振り返って江崎鏡を見...

ログインして続きを読む