第40章

古村陽平は彼女の身の上をろくに調べたこともなく、ただ江崎明の隠し子だということだけを知っていた。江崎清との関係など気にもかけていない。だからこそ、彼はこんな言葉を心安らかに口にできるのだ。彼女の目には薄っすらと涙が浮かんだが、意地を張って決して流すまいと自分に言い聞かせた。

「あなたも彼らと同じ、自分勝手で気持ち悪い。私の母のことを口にする資格なんてない」

古村陽平は江崎鏡の突然真剣な口調に、なぜか心が動揺した。彼は立ち上がって言った。

「君と江崎明のことには口出しできないが、私の名前を勝手に使って行動するな。離婚したいなら、江崎明との約束を取り消すか、三ヶ月待つかだ」

江崎鏡は古村...

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