第43章

江崎鏡は一目見て、返事をしなかった。今、自分の夫と不倫の疑いがある女性のためにジュエリーをデザインするなんて、どんな気持ちで取り組めばいいのか本当に分からなかった。

結局、長い間迷った末、携帯を手に取り、古村陽平に電話をかけようとした。落ち着かない心をもはや抑えきれなくなっていた。

古村陽平は本当に女優と関係を持ってしまったのだろうか?今、ホテルにいるのか?何をしているのか?

江崎鏡はある瞬間には二人がもうベッドの上にいると想像し、次の瞬間には、あの潔癖症の古村陽平のことだから、他の女性には絶対に手を出さないはずだと思ったりした。

江崎鏡がそんな取り留めのない考えに囚われていた時、突...

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