第50章

江崎玉子は江崎鏡に鋭い視線を向けると、すぐに踵を返して立ち去った。実は江崎玉子が今日ここに来たのは、江崎清から秋澤月子がここに入院していると聞いたからだった。

彼女は知っていた。この数年間、江崎鏡が母親の居場所を徹底的に隠し、一切の情報を漏らさなかったことを。だが、まさか彼女が自分の母親を市の中心部にある病院に置いているとは思わなかった。

彼らは長い間探し続けたが、見つけることができなかった。実際、秋澤月子がもう目覚めることはないだろうとわかってはいたが、それでも心のどこかで恐れていた。もし秋澤月子が目を覚ましたら?もし彼女が目覚めたら、過去の出来事はもう隠し通せなくなる。

だから江崎...

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