第54章

古村陽平や江崎清が何を言おうと何をしようと、彼女はもう気分が沈むことはないだろう。

子供を守らなければならない。今は子供以上に大切なものなど何もない。産婦人科から出てきた彼女は妊娠検査報告書を受け取った。赤ちゃんは健康だと書かれている。エコー写真に映っている黒くてぼんやりとした小さな塊、これが彼女の赤ちゃんなのだろうか?

天野尋が傍らで言った。「赤ちゃんはとても健康よ、鏡。絶対に無理しないでね。もう嫌なことは考えないで」

江崎鏡はうなずいた。「わかってる。必ず赤ちゃんを大切にするわ」

そして何か思い出したように続けた。「そういえば、先輩、良い療養施設を知らない?」

「どうしたの?」...

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