第92章 中島さんが口を開く

小林輝はあれこれと考えては悦に入っていたため、以前目にしたあの車が立ち去ったのではなく、単に人目のつかない場所へ移動しただけだということには気づかなかった。

車内の人間もまた、明らかに彼の姿を捉えていた。

青山雅紀に挨拶するつもりは毛頭なかったが、付き添いで来ていた中島が堪えきれずに尋ねた。

「若様、あの方は小林先生のようですが、お声をかけますか?」

「必要ない」

青山雅紀は即座に拒絶した。

中島は主人の顔色が優れないように感じたが、深くは考えず、ぶつぶつと独り言を続けた。

「おや、それにしても小林先生はどなたを送ってこられたんでしょうね」

「まさか、小林先生も彼女を送りに来...

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