第8章

 直樹が事態を収拾できると信じ込んだその瞬間、私は彼を徹底的に叩き潰した。

 私はチューリッヒのホテルのスイートルームに身を沈め、三台のタブレット端末が計画の最終段階を一斉に実行に移す様子を見守っていた。

 治験データの改ざん、患者死亡事故の隠蔽、長年にわたる脱税のからくり――そのすべてが、匿名の内部告発システムへと一斉に送信されたのだ。

 一方、麗華の悪夢もまた、幕を開けていた。

 彼女は医療詐欺および資金洗浄の容疑でFBIに逮捕された。逮捕に抵抗した際、階段から転落し、頬骨の骨折に加え、肋骨三本と左腕を折る重傷を負ったという。

 同房者は「マサ」と呼ばれる女だった。かつて夫の愛...

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