第9章

 直樹がロイヤルホテル・ローザンヌの最上階にあるスイートルームの扉を押し開けた。中には私一人だけ。

 私は彼から渡された手術用メスを強く握りしめた。

 彼は私を見た。その表情は驚愕から困惑へ、そして最後には絶望へと変わっていく。

「雪音……」

 私は振り返り、切っ先を彼の心臓に向けた。

「あなたが私の両親を殺したのよ」

「違う」

 彼はそう呟いたが、私の瞳に宿る殺気を見てその場に立ち尽くした。

「そんなんじゃないんだ」

 彼が私の手を掴もうと身を乗り出す。私は一歩下がり、メスの先端を彼の胸に押し当てた。

「動かないで」

 直樹は膝から崩れ落ち、懇願するような目で私を見上...

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