第3章

震える手で運転席に滑り込んだ。キーをイグニッションに差し込むのに、三度もかかった。ようやくエンジンがかかる。

バックミラーに、まだ黒紋付袴姿の圭吾が神社から飛び出してくるのが見えた。彼は私の名前を叫んでいたけれど、私は止まらなかった。もう二度と。

私はアクセルを踏み込み、家へと向かって街を突っ切った。一マイル進むごとに、煙は濃くなっていく。

『父さんの写真。父さんの手紙。一緒に撮ったたくさんの写真……』あれが燃えてしまったら、私にはもう何も残らない。

家の通りにたどり着くと、家全体が炎に飲み込まれていた。消防車が道端にずらりと並び、大量の水を放っていたが、火の勢いはあまりに強すぎた。強すぎる。

車から飛び降り、家に向かって走る。一人の消防士が私の腕を掴んだ。

「お嬢さん、そっちはダメです! 危険すぎます!」

「私の家なんです!」私はその腕を振りほどこうともがいた。「父のものがまだ中に!」

「申し訳ありません、お嬢さん。ですが、安全ではありません。火の勢いが強すぎて。鎮火に全力を尽くしていますが……」

「由実!」背後から圭吾の声がした。

振り返ると、彼がいた。あの神前式の黒紋付袴のまま、今ではすっかりしわくちゃで汚れてしまっている姿で、こちらへ走ってくる。

「あなたがいるべき場所じゃない」私は氷のように平坦な声で言った。

「由実、とにかく聞いてくれ――」

「何を聞けって言うの?」私は彼の言葉を遮った。「あなたがこれを全部計画したこと? どうやって三年間も私を騙し続けたのか、とか?」

他の消防士たちがこちらを見ている。人々がひそひそと噂している。神社で起こったことは、一時間もすれば町中に知れ渡るだろう。

「隊長」若い消防士が歩み寄ってきた。「火の勢いはほとんど制御できましたが、内部は……」

「全焼、ですか?」私が尋ねた。

彼は頷いた。「本当に、お気の毒に、お嬢さん」

父と私が十年も一緒に暮らした家が、黒く焼け落ちた骸と化しているのを、私はただ見つめていた。黒焦げの骨組みと、燻る瓦礫しか残っていない。

「まあ、お気の毒に」聞き覚えのある声が背後からした。

振り向くと、そこに小栗彩が立っていた。彼女は着物からジーンズとTシャツに着替えていたが、その顔には満足げな笑みが浮かんでいた。

「あなたね!」私は彼女に突進したが、圭吾に阻まれた。

「この火をつけたのはあなたでしょう!」

「証明できるものならしてみなさいよ」小栗彩は肩をすくめた。「証拠でもあるわけ? それとも、殺人犯の娘がいい暮らしをしちゃいけないって、天罰でも下ったんじゃない?」

人々が集まってくる。消防士、隣人、通りすがりの野次馬。誰もが好奇と疑惑の目でこちらを見ている。

「彩、もうやめろ」圭吾が低い声で言った。

「やめる?」彼女は冷たく笑った。「まさか」彼女は群衆の方を向き、声を張り上げた。「皆さん、もっと詳しく教えてあげましょうか。新井理はただ火を放っただけじゃない。私の両親が家にいると知っていて、それでも火をつけたのよ!」

「違う!」私は叫んだ。「そんなの嘘よ!」

「嘘?」小栗彩はハンドバッグから書類を取り出した。「これは警察の報告書よ。火災が発生した時、小栗夫妻は二階で寝ていたって、ここに書いてあるわ。新井理は誰にも知らせずに火をつけて逃げたの!」

群衆から、さらに衝撃を受けたような囁き声が漏れる。

「人がいるって知ってて火をつけただと?」

「そりゃあ報いも受けるわな……」

何十もの視線が、ナイフのように私に突き刺さるのを感じた。

「あなたたちは本当のことを何も知らない!」私は叫んだが、その声はざわめきの中に掻き消された。

小栗彩が一歩近づき、声を潜めた。「新井由実。これは始まりにすぎない。あんたの父親は私の家族を壊した。私もあんたに同じ代償を払わせてやる」

「教えてあげなさいよ、圭吾」小栗彩は彼の方を向いた。「いつ彼女の正体に気づいたのか。三年前、彼女の家の近くに住んでたのって――全くの偶然、だったのよね?」

誰もが圭吾を見つめ、答えを待っていた。私もまた、最後の一縷の望みにすがりながら、彼を見た。

圭吾は私の目を見つめ返した。その顔には苦痛と罪悪感がはっきりと浮かんでいた。「三年前だ。両親の死について調べているうちに、君を見つけた」

「じゃあ、どうして私に近づいたの?」私の声は震えていた。

長い沈黙が流れる。

「最初は……」圭吾は言葉に詰まった。「最初は、君の父親がしたことの代償を、君に払わせたいと思っていた」

群衆からさらに囁き声が漏れる。私は息をするのも苦しかった。

「でも、君を愛してしまったんだ」圭吾は慌てて付け加えた。

「愛?」私は乾いた笑いを漏らした。「何を愛したっていうの? 敵の娘が自分に惚れていくのを見るスリル?」

「違う、由実、私は――」

「いつ本当のことを言うつもりだったの?」私は遮った。「結婚した後? 私が妊娠した後? それとも、一生言わずに――私を永遠に嘘の中で生かしておくつもりだった?」

圭吾は答えられなかった。

彼の隣で、小栗彩がにやりと笑う。「彼があなたに言うはずなかったのよ、新井由実。もし今日私が声を上げなかったら、あなたは一生、見ず知らずの男と結婚生活を送ることになったかもしれないわね」

私は周りの群衆を見渡した――三年間、隣人として暮らしてきた人たち。隣の本田さん、病気のお母さんの介護を手伝ったこともある。スーパーの永井さん、いつも割引してくれた。

でも今、彼らは皆、違う目で私を見ていた。

「なんだか変だとは思ってたのよ」本田さんが誰かに囁いている。「いつも静かで、何か隠してるみたいだった」

「そりゃあ家族の話なんてしないわけだ」永井さんが言った。「あんな父親がいるんじゃな」

一つ一つの言葉が、私を切り裂いていく。三年間、必死に働き、人々を助け、この町に溶け込もうと努力してきた。全てが無駄だった。

私はいつまでも「殺人犯の娘」なのだ。

「もうここにはいられない」私は独り言のように呟き、それからもっと大きな声で宣言した。「私はこの場所を離れます」

「由実、待ってくれ――」圭吾が私に手を伸ばす。

「触らないで!」私は後ずさった。「小栗圭吾、私たちは終わりよ。完全に、終わり」

私は自分の車の方へ向き直った。小栗彩が背後から呼びかける。「逃げなさいよ、新井由実! でも、あんたの父親の罪からは逃げられないわ! どこへ行こうと、あんたは一生、殺人犯の娘よ!」

車に乗り込み、エンジンをかけた。バックミラーには、まだ指をさして噂話をする群衆と、惨めな表情で立ち尽くす圭吾、そして得意げな笑みを浮かべる小栗彩の姿が映っていた。

私は町に一つだけある旅館へと車を走らせた。私が行ける唯一の場所だった。

フロント係は清水美智子という名の五十代の女性だった。彼女は私を見ると、その目に認識の色がちらついた。

「部屋をお願いします」私は言った。

「お一人様で?」彼女は尋ね、そして言葉を止めた。「今日、神前式じゃありませんでしたか?」

「神前式は中止になりました」

美智子の表情は複雑なものになった――同情と好奇心、そしておそらくは少しの恐怖が混じり合っている。明らかに、噂はもう広まっているのだ。

「一泊おいくらですか?」

「八千円です。どのくらいご滞在の予定で?」

「わかりません。とりあえず一週間分でお願いします」

彼女が鍵を手渡すとき、慎重な口調で言った。「何か……あったと伺いましたが?」

私は答えなかった。ただ鍵を受け取り、二階へと向かった。

部屋は狭かった――ベッドと机、小さなバスルームがあるだけ。でも、少なくとも静かだった。誰もこちらをじろじろ見たり、ひそひそ話したりしない。

ベッドの端に腰掛け、鏡に映る自分を見つめた。あのひどい化粧がまだ顔に残っていて、今となっては一層滑稽に見える。

バスルームへ行き、顔をこすり始めた。冷たい水が悪意に満ちた化粧を洗い流していく。でも、胸の中の痛みと怒りは洗い流すことができなかった。

『ここで新しい人生を見つけたつもりだった。愛を見つけたつもりだった。でも、最初から全部偽物だったんだ』

携帯電話を取り出した。小栗圭吾からの不在着信が何十件も入っている。メールもいくつか。

私は圭吾からのメッセージをスクロールした。

「由実、説明させてくれ」

「怒っているのはわかっている。でも、どうかチャンスを欲しい」

「信じてもらえなくても構わない――本当に君を愛してしまったんだ」

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