第6章

二週間後、私は緑山町に戻っていた。でも今回は町の中心部の旅館には泊まらず、代わりに町はずれの小さな民宿を借りていた。大家は天野勇次という老人で、家賃さえ期日通りに払えば町の噂話なんて気にしない人だった。

その場所はかなり質素だったが、私が必要とするには十分だった。どうせ長居するつもりはなかった——ただ父が始めたことを終わらせるのに十分な期間だけ滞在し、それから永遠にこの町を去るつもりだった。

私は父の手紙と西村健がくれた写真を小さなテーブルに広げ、何百回目かの読み返しをしていた。その手紙を読むたびに、父の最後の数ヶ月のことを考えた——不安、眠れない夜、あの虚空を見つめる目。

今...

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