第100章 その美人、凶暴につき(1)

野次馬は空港から出てきた人間ばかりだ。飛行機を利用するような層の多くは二十万程度の金など気にしないため、今のところ扇動される者はいなかった。

有閑マダムが連れてきた四人の手下は、残すところあと三人。だが所詮はチンピラ崩れだ、彼らにとって二十万は大金である。三人は即座に葉山天へ襲いかかった。

「危ない!」

誰かが懐からナイフを取り出したのを見て、西園寺樹希が悲鳴を上げる。

葉山天は左後方のナイフ男を視界の端で既に捉えていた。相手が刺し込んできた瞬間、葉山天は素早く反転し、正確かつ冷徹に男の手首を掴むと、猛然と下へねじり込んだ。

バキッという乾いた音と共に、豚を殺す時のような絶叫が響き...

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