第109章 艶めかしい喘ぎ

「やっぱり上に誰かいるぞ!」

さっき窓から顔を出して確認した男が、車内に戻るなり嘲笑うように言った。

車内には男が三人、拉致された西園寺樹希を含めても四人しかいない。彼らは葉山天を完全に侮っており、自分たちに絶大な危機が迫っていることなど微塵も感じていなかった。

「俺の興を削ぐような真似はさせるな。お前、ドスで追い払ってこい!」

リーダー格の男が手下に大型のサバイバルナイフを手渡す。

ミニバンのルーフには、オフロード車のようなルーフレールも何もない。上にいる人間は、屋根の縁にあるわずかな隙間に指をかけ、這いつくばるしかないのだ。一度手を滑らせれば、即座に振り落とされる運命に...

ログインして続きを読む