第56章 少女の香り

桜島春奈は服を着終えると、葉山天に向かって言った。今日の彼の活躍は病院中の注目を集め、上司たちもかなり評価しているため、特別に今夜食事会に招待したいとのこと。すでに席も予約してあり、婦人科の医師たちも数人同席するという。

本来なら葉山天は断るつもりだったが、ここまで言われては気まずいと思い、頷いて承諾した。

しかし、まだ昼間で、退勤まであと数時間ある。葉山天は少し外出することにして、桜島春奈のオフィスを出た後、病院を出た。広がる街を見渡すと、どこへ行けばいいのか分からない感覚に襲われた。

今日のY市は数年前のY市ではなかった。都市のインフラが一変しただけでなく、かつて連絡を取り合ってい...

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