第5章

「そんなの、嘘よ」

母はそう呟き、ベッドの端に崩れ落ちた。

「ありえないわ」

「あの子、あんなに静かに横たわっていたじゃない。音一つ立てずに。それなのに、そんな大怪我をしてるなんてことある?」

母は自分に言い聞かせるように呟いた。

「その一方で、結衣は沙織に転ばされて、足首を捻って痛がって地面を転げ回っていたのよ」

突然、母は立ち上がり、落ち着きなく部屋を歩き回り始めた。

「みんな嘘をついているのよ。そうに決まってる」

言い終わるか終わらないかのうちに、母は一階のダンススタジオへと駆け出した。

母はスタジオのドアを押し開け、血走った目で磨き上げられた床の隅々までを...

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