第5章

 神宮寺直方は警察署で一夜を明かした。

 帰ることを拒み、廊下のベンチに座り込んで、霊安室のドアをじっと見つめ続けていた。

 翌朝、刑事課の佐藤警部が書類を手にやってきた。

「神宮寺さん、確認したいことがあります」

 佐藤警部の声は硬く、この『夫』に対して好感を抱いていないのは明らかだった。

 神宮寺直方が顔を上げる。目は充血し、無精髭が伸び、一晩で十年も老け込んだように見えた。

「犯人は捕まったのか?」

 紙やすりで擦ったような声だった。

「現在捜査中です。ですが今は動機と時系列の確認が重要です」

 佐藤警部は透明な証拠品袋を彼の膝に放った。

「被害者の手の中から発見さ...

ログインして続きを読む