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何も考えずに、指が動くままにハドリアンの番号を保存した。だが、画面に彼の名前が表示された瞬間、私はためらった。私から連絡すべきだろうか? その疑問が私を苦しめ、眠りへの望みをすっかり打ち砕いてしまった。彼の仕打ちを許せるかどうかは分からなかった。けれど、彼が私たちを諦めていなかったという考えに、心臓の鼓動が速くなる。それでも、ケンゾーの存在があった。彼は巧みで、それでいて執拗に、計算された一つ一つの小さな行動で私の思考に入り込んでくる。彼に引き寄せられていく。その力に抗うのは、ほとんど不可能だった。

アラームが鳴るずっと前に、私は起き上がった。

アドレナリンが全身を駆け巡り、どんな休息より...

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