第6章

 翔太のマイバッハのシートに身を沈めながら、私はどうしても五年前の夜を思い出さずにはいられなかった。狭いシングルベッドに二人で体を押し込み、私が消えてしまうのを恐れるかのように、彼がその腕で強く抱きしめてくれた、あの夜のことを。

 今、私たちの間には革張りの後部座席半人分もの距離がある。そこには五年という歳月と、数え切れないほどの嘘が横たわっていた。

「元気そうだな」

 先に口を開いたのは翔太だった。その声には、私には読み取れない感情が滲んでいた。

「成功が似合っているよ」

「御託はいいから。話があるなら五分だけって言ったはずよ。時間は刻々と過ぎてる」

 彼は微かに笑みを浮かべた...

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