チャプター 112

レオ視点

寝室のドアが閉まった瞬間、その向こうの世界は存在しなくなった。群れの仲間も、要人たちも、儀式の重圧もない――ただリナと俺だけ。夫と妻、アルファとルナとして結ばれ、誓いの言葉よりも深い何かで織り上げられた番同士。この部屋、俺たちの聖域は、彼女のために俺が作り上げた世界だった。あらゆる場所にキャンドルが置かれ、その金色の灯火が壁で踊り、彼女のお気に入りであるジャスミンとバニラの甘く濃密な香りと混じり合っていた。バルコニーのドアからは涼やかな山の風が滑り込み、空気を優しく撫でる。ベッドサイドランプのそばのソファには、シャンパンのボトルがアイスバケットで冷やされ、添えられたクリスタルのフル...

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