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レオ視点

【前日】

朝の空気は肌を刺すように冷たい。最後の腕立て伏せをセットし終えると、涼しい気温にもかかわらず、汗がトレーニング場に滴り落ちた。午前五時半。この時間は俺のお気に入りのトレーニングタイムだ。世界はまだ静寂と平穏に包まれており、ベッドで眠るリナを残してきても罪悪感を感じなくて済む、十分早い時間帯だからだ。

今朝、俺の中の狼は落ち着きがない。皮膚の下を行ったり来たりしているそのエネルギーは、ワークアウトとは無関係だ。何かが近づいているという、根底にある予感に突き動かされているのだ。俺にもそれ――重要な群れの仕事や超自然的な出来事の前触れである、あの空気が張り詰...

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