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リナ視点

正面の扉をくぐり抜けると、パックハウスの空気は以前とは違って感じられた。背中には、私を支えるレオの手の温もりがある。感覚が鋭敏になっているせいなのか、それとも一ヶ月もの不在がすべてを懐かしく、同時に奇妙なものに変えてしまったのか。杉の木やコーヒーの香り、そして大勢の仲間の残り香――本来なら安らぎを与えてくれるはずの「家」の匂いが、今はひどく強烈に感じられる。まるで目覚めたばかりの私の意識が、生ける世界の豊かさを処理しきれずにもがいているようだった。

広間からは話し声が聞こえてくる。会話と控えめな笑い声が混じり合い、ここ数週間、私たちの家を覆っていた深い悲しみの中で、仲間たちが必死...

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