第10章

部屋の中が突然静かになった。

大澤玲子は心虚な表情を浮かべる二人を見つめ、目の奥の感情を抑え込んだ。

「もう行くわ。お父さん、私は会社の株を二十パーセント持っているの。後で口座を送るから、これまでの配当金を一銭も残さず振り込んでちょうだい。私が会社まで取り立てに行くことになれば、お互い面目丸つぶれになるわよ」

会社の株式は母が自分の代わりに刑務所に入ることで手に入れた恩恵だった。

長年、父親が本来彼女のものであるはずの財産を握りしめて渡さなかった。今こそ取り戻す時だ!

大澤玲子はそう言うと、その場にいる人々を見ることなく、大澤おばあさんに向かって言った。

「おばあちゃん、私と一緒...

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