第30章

平野純平は頭も上げずに淡々と尋ねた。

「まさか、この子は俺の子供だって言うんじゃないだろうな?」

「そんなことはないさ」

戸田康太は写真立てを元の位置に戻した。

「お前がどれだけ潔癖かは知ってる。四年前に俺が無理やり女を押し付けた以外は、他の女に手を出したことなんてないしな」

その件について触れられ、平野純平の表情が冷たくなった。

「もう二度とそんな冗談を言うな」

戸田康太は悪戯っぽく笑った。

「お前のためを思ってのことだろ。二十過ぎの男がまだ女を知らないなんて、笑い話になるじゃないか」

彼は一呼吸おいて、からかうように続けた。「実際、女の味は素晴らしかっただろう?」

平...

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