第55章

主席の席に座っている男性は平野家の長男、平野隆雄で、平野純平と幾分か似た容貌を持っていた。

ただ、平野純平の凛々しさと比べると、彼の雰囲気には何か邪な気配が混じっていた。

今、平野隆雄は手にしたスマホをもてあそびながら、不敵に笑った。

「あいつは本当に命が強いな」

あんな高い崖から落ちたのに、まだ生きているなんて。

本当に残念だ。

そのとき、会議室のドアが開き、車椅子に座った平野純平が押されて入ってきた。

会議室内の全員が静かになった。

「純平、来たのか」平野純平の父が口を開いた。

「父上」

平野純平は軽く頷き、その後主席の方へ移動した。

平野隆雄は平野純平を上から下ま...

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